蔵田武志氏インタビュー
[ ARとは ]
ARは【Augmented Reality】(オーグメンテッド・リアリティ)の略で、拡張現実を意味します。
簡単に言うと、リアルの世界とデジタルの世界を重ね合わせる技術です。
現在、ゲームアプリなどで話題に上がっていますが、現実の世界を拡張させてデジタルの世界と融合させることで様々なサービスを提供可能にします。
本書はそのAR技術をわかりやすく、体系的に示した書になっています。
AR(拡張現実)技術の基礎・発展・実践

AR(拡張現実)技術の基礎・発展・実践蔵田武志氏 インタビュー

編集部
『AR技術』の面白さはなんでしょうか?
蔵田様
インタビューリアル世界とそれに関連するバーチャルコンテンツを合わせるところだと思います。
今まさに話題になっている「ポケモンGO」でもそんな楽しみ方がありますよね。
焼き鳥屋さんで鳥のキャラと合わせて写真撮ったりとか。
ガスコンロの上にタイのキャラクターをちゃんと合わせてとかも。
そうやって撮影した写真をソーシャルメディアにアップしたり。
必然性とは言いませんが、そうやってリアルとバーチャルの世界を繋ぐことがARの楽しみ方の一つだと思います。
「ポケモンGO」はそこを本当に面白く突いていて、出口ファーストなコンテンツだと思っています。
編集部
ARの出口ファーストとは?
蔵田様
インタビューユーザーを第一に考えるということです。 私自身、コンテンツを作成する上で出口ファーストという考え方は非常に大事だと思っています。
技術ももちろん大事なのですが、ユーザーに対して状況に応じて何を提供すべきか、出口側の研究も私自身取り組んでいます。
実際にポケモンGOのようなコンテンツを作るのはすごく大変なことなんです。
目に見えない地図データとか、そういったバックグラウンドの部分に膨大なデータが必要なんです。
それに加えて今問題になってくるような歩きスマホなどの安全性の問題も出てくる。
使用する人間の行動を認識する機能を進歩させて、安全性を高めることは必須になってくると思います。
測位技術も今は駅中なのか線路に近いのかが明確に区別できないこともありますけど、そこの精度を上げて安全性を担保した方が絶対にいい。
ただ変に制限をかけたりするとユーザビリティが下がってしまうので、そのバランスは難しいとは思うんですが今後はもっと重要な部分になってくると思います。
編集部
AR技術を活かす具体例はどのようなものが考えられますか?
蔵田様
ARの用途はかなり幅広いと思っています。
機器や施設のメンテナンス、教育、など人に対する支援に対しては特に有用だと。
人が立ち入れない場所、立ち入りづらい場所をARで視覚的にサポートして、間違いが起こらないようにする。
放射線もそうですけど、見えないものを見える化できることがARの強みだと思います。
教育に関しては、よく「あまり人間に対してシステムが支援しすぎると、人は馬鹿になる」みたいな話を聞きますが、支援の仕方次第だと思っています。
例えば場所場所のご当地クイズみたいなものをARで表記して知識を高めるとか、道の看板を英語教育に使うとか、リアルワールドの全てを教材とすることもARなら可能だと思うんです。
編集部
今後のARはどうなっていきますか?
蔵田様
ARは今後ますますフルデジタルの部分とリアルな部分が混ざっていくと思います。
ゲーミフィケーションみたいなゲーム的な要素はARの一部なので、そういった部分を押し出して産業として成長していく面もあると思います。
話題になっているIoTに関しても、そのメリットを人に届ける一番典型的な手段がARだと考えています。
AR技術を使えば、周辺の状況を全てわかった上で行動できるのでそういう意味でもIoTにとって非常に重要な技術になってくると思います。
編集部
それでは最後に、この本で先生が最も伝えたかったことは?
蔵田様
インタビューこの本では実際に設計していく上での技術的なことを中心に載せています。
どんな技術でも『① 実世界がどうなっているかを知る技術』、『② 知った後にそれを扱い処理する技術』、『② 処理した結果を実際に届ける技術』、という括りになると思うんですが、欲張りなので本書には全部入れています。
出口に関してはいくつか示さなければならないと考えていたので、特に載せています。
その他には、位置情報に関して重要なPDRですね。
歩行者の推測航法なんですが、どの方向にどれくらいの速度で歩いているか、などを推測する技術なんです。
地図アプリなどで一部実用化されているんですが、安全性の観点からも重要な技術です。
ARと直接的に関連する技術ではありませんが、出口ファーストで考えた場合は必要な技術なのでそういったものも載せています。
あとは私自身が標準化に関する活動をしているので、ARの標準化に関しても。
パフォーマンスの標準化はもちろん載せていますが、安全性の標準化などは今後非常に重要になってくると考えています。
この本を読んでもらえれば、AR技術を一通りわかってもらえるとは思っています。
蔵田 武志(くらた たけし)
1996年筑波大学大学院工学研究科修士課程修了。現在、産業技術総合研究所人間情報研究部門研究グループ長(兼筑波大学大学院連携大学院教授)。2003年~2005年JSPS海外特別研究員(ワシントン大学)。日本バーチャルリアリティ学会理事。ISO IEC/JCT 1/SC 24委員、SC 24/WG 9(ARの概念と参照モデル) 国内小委員会主査。TrakMark WG委員。PDRベンチマーク標準化準備委員会委員長。博士(工学)。
AR(拡張現実)技術の基礎・発展・実践
AR(拡張現実)技術の基礎・発展・実践
監修: 蔵田 武志氏(産業技術総合研究所)
清川 清氏(大阪大学)
編集: 大隈 隆史氏(産業技術総合研究所)
価格: 6,600円(本体)+税
判型: A5
ページ数: 390 ページ
ISBN: 978-4-904774-39-7
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